ずーーーっとずーーっと前から
読んでみたいなぁと思っていた本。
私が唯一作品を見て作家名がわかる
現代彫刻家、船越桂さんの作品が表紙なのも
気になっていた理由のひとつ。
発行された当初に、テレビで紹介されたのを見て
読みたいと思ってたんだけど、
その想いしか覚えてなくて、
肝心の内容を全然覚えてなくて、
なかなか手を出せなかったんですが。
BOOK・OFFで100円で売られてまして。
買ったよねー。
さて、内容はというと…
こういう話だったんだぁ、と。
「死」という、永遠の謎に包まれたテーマを
色々な方向から真摯に見つめた作品です。
身近な人を亡くした人なら
何度か考えた事があるとおもう、
生活をしているうちに忘れてしまう時がある
という事。そこに真っ正面から向き合った主人公と
その周りを取り巻く人たちの話なんですが、
その一人一人の描写がすごく細やかで
少なくはないと思われる数が出てくるのに、
一人としてこの人誰だったっけ?という事もなく
どんどんと肉付けされてリアルに動き出す感じで。
読めば読むほど続きが気になって
(どこに向かっていくのかが分からない!)
時間さえあれば読んでました。
テーマがテーマなだけに、
泣ける場面も多くて、
一度だけ地下鉄で読んでる時にほんのり泣いてしまい
誤魔化すのが大変でした。
結末は永遠の謎な部分なので
ふんわり終わってしまったのは
残念だけど仕方なかったかなという感じ。
私には静人のような生き方はできないけれど、
彼の生き方を偽善と否定はできないなと思いました。
自分は日々を自分のために生きる事を
選んでいるけれど、
静人のように忘れずに心に留めてくれよう
としている人がいると思うと
安心してしまいます。
小説の中の話なので、
実在はしないんですがね。
でも、今もどこかで彼が誰かの事を悼んでいるのだろう
そう思える余韻のある小説でした。
ただ一つ、
お母さんに会って欲しかったな。
予定調和でも。

コメント